仙台高等裁判所 平成5年(ネ)417号 判決 1994年2月28日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
理由
一 当裁判所も被控訴人の本訴請求は理由があるものと判断する。その理由は、原判決二枚目裏末行冒頭から同三枚目表一〇行目末尾までを次のとおり改めるほかは、原判決理由摘示のとおりであるから、これを引用する。
すなわち、一審被告磯谷邦夫は、手形の振出人欄に「有限会社東邦商事代表取締役磯谷邦夫」の記名印を押捺し、その横に「有限会社東幸商事」の代表取締役印を押捺したもので、両者の形式的関連性は認められない。しかし、ある人の印判はこれであるというように、それを特定できるだけの完備した制度が確立されていない以上、手形法八二条にいう捺印につき、記名との形式的関連性を要求することは困難であり、右形式的関連性がなかつたとしても、手形行為者が自己の意思に基づいて押捺すれば有効な捺印と解される。
そして、前記認定の事実からすると、控訴人東邦商事の代表者として一審被告磯谷邦夫は、内心の意図は別としても、その意思に基づいて「有限会社東邦商事代表取締役磯谷邦夫」の記名印、「有限会社東幸商事」の代表取締役印を押捺したものであり、本件手形には有効な記名捺印がなされているというべきである。
二 よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 豊島利夫 裁判官 永田誠一 裁判官 菅原 崇)